2026年9月15日(火)、「歴史的拠点を再生させたリーダーから学ぶコミュニティの極意」をテーマに、地域活性化勉強会&交流会を開催しました。
今回の登壇者は、埼玉りそな銀行狭山支店の元副支店長で、現在は川越の「りそな コエドテラス」で館長兼コミュニティリーダーを務める森 直人さん(現 埼玉りそな銀行武蔵藤沢支店長)です。
築100年を超える歴史的な銀行建築を“共創”の拠点として再生させた取り組みや、350名を超える会員が集うコワーキングスペースの運営、そして銀行員として「人と人をつなぐ」ことを大切にしてきた森さんが現場で実感している、コミュニティづくりの極意についてお話を伺いました。
Part 2では、りそなグループのルーツである第八十五国立銀行と渋沢栄一翁とのつながり、地域デザインラボさいたまの設立、そして歴史的建築を「共創施設」として再生させたりそな コエドテラスのコンセプトについてお話しいただきました。
地域活性化勉強会&交流会とは

森さん
りそなグループの歴史を紐解くと、明治時代に全国で153行設立された国立銀行設立ブームに行き着きます。
渋沢栄一翁が立ち上げた第一銀行に始まり、全国で85番目に埼玉の川越に誕生したのが第八十五国立銀行です。
この八十五銀行をルーツに持つ建物は築108年を迎える歴史的建築物であり、私が2013年頃に働いていた際も古い店舗として活用されていましたが、老朽化や耐震補強の観点からいよいよ移転が決定いたしました。
りそなグループは渋沢栄一翁と深く密接に関わっております。渋沢翁は熊谷銀行の発起人を務められたほか、お隣の入間にあった黒須銀行の顧問、武州銀行ではご子孫の尾高家の方が頭取を務められていました。
当時、黒須銀行では融資によって得た利息を市内の教育のために寄付していたことから、市民や街の方々から「道徳銀行」と呼ばれていたのです。
これを知った渋沢栄一翁が、道徳と経済、モラルと利益は両立させるべきであるという教えを説き、自筆で「道徳銀行」と書いていただいた扁額が今も残っています。この扁額は現在、銀行の本店に飾っており、深く密接に関わりながら今も運営しております。

森さん
2021年10月、埼玉りそな銀行は地域活性化のための子会社「地域デザインラボさいたま(愛称:ラボたま)」を設立しました。
銀行というのは銀行法という法律の下で許認可ビジネスを行っていますが、近年の規制緩和の流れを受け、単なるご融資やご預金にとどまらず、地域活性化やまちづくり、各種コンサルティングを通じて新しい価値を生み出す地域の皆さまとの「価値共創」をコンセプトとして立ち上げた会社です。
最初は数名でスタートしましたが、外部から入ってきていただけるキャリアの方や私のような銀行出身の人間も交えつつ、現在は30名弱の体制で運営しています。
ラボたまは、この狭山でも非常に深いご縁がございます。
狭山市内のスターバックスがある「入間川にこにこテラス」の誘致業務をラボたまのメンバーが主導したほか、こちらの狭山市産業労働センター運営におけるオープンイノベーションやビジネスマッチングの業務も現在進行形で受託させていただいております。
部隊として一番人数が多いのは、まちづくり分野であるPFIやPPPといった上流のコンサルティング部門です。
最近で一番大きなお仕事は、埼玉県さんからの受託である「スーパー・シティプロジェクト」など、街をコンパクト・レジリエンス・スマートに変革していく取り組みを自治体と民間の方とソリューションを合わせながら作っていく案件を手掛けております。
私自身は産業創出支援やビジネス面の支援を中心に、施設全体の運営全般を担っています。

森さん
川越について、2012年頃に営業していた時は全く観光地の感覚がなく普通の商店街という印象でした。しかし、大河ドラマ「春日局」の放映をきっかけにスイッチが入り、アーケードを撤去したり電線を地中化したりと、国の補助金を活用しながら蔵の街を復元してきたのです。
現在では重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。川越市さんとは別に民間の中間組織として「街並み委員会」が存在し、街を守ってきた歴史があります。
我々が施設をリノベーションしてオープンする際も、看板一つに至るまですべて街並み委員会に相談し、了承を得ながら進めました。
建物を手がけたのは、東京駅の赤レンガ駅舎を設計された辰野金吾さんのお弟子さんにあたる、建築家の保岡勝也さんです。当時、川越の和菓子屋「亀屋」の当主であり八十五銀行の頭取でもあった山崎嘉吉さんが、川越の大火で消失した店舗の跡地に新しく象徴的な建物を建てようと1918年に保岡勝也さんに依頼し、この洋風の銀行建築が建てられました。
そもそも八十五銀行を設立したのは、米穀商や醤油問屋、和菓子屋さんといった地域のビジネスをやられている川越の御用商人と言われる豪商の皆様であり、当時の大蔵卿である大隈重信さんに国立銀行設立を願い出て、認可を受けたという経緯があります。
川越にはこの建物の向かいに旧山吉デパートや旧山崎家別邸など、いくつか洋風建築がまだ現存しており、この建物は1996年のあさひ銀行時代に埼玉県の第1号として国の登録有形文化財に指定されました。

2020年5月に支店が老朽化で川越駅直結の「U_PLACE」という商業施設へ移転することが決まった前後で、老朽化した文化財をどう活用していこうかと社内プロジェクトが発足しました。
銀行単体では用途として発想が広がらないため、プロポーザルを実施し、共同事業者として手を挙げていただいた企業さんをはじめ、本イベント主催のコミュニティコムさんと共にリノベーションを進めたのです。
利活用のコンセプトは「川越の未来100年を支える産業の育成発展の場」です。歴史的に100年間銀行業務をやっていた場所ですので、継続的に循環エコシステムが続いていくような施設にしようということで、共に創る「共創施設」にしていこうというのが大きな柱になります。

約900坪ある敷地は、東西に回遊性が生まれるような形で設計しました。
銀行時代の駐車場のバーや貸金庫棟を取り払い、ATMコーナーは後方へ配置し、新しくシェアキッチンやジェラートショップをオープンしています。
建物は1918年当時のオリジナル部分と、手狭になったために1945年に東側に増築された部分に分かれており、国の文化財に指定されているのは手前のオリジナル部分のみとなります。
1階には埼玉ヨーロッパ野菜研究会などとつながりのあるノースコーポレーションさんに入っていただき、イタリアンをメインに、地産地消を掲げ、埼玉の魅力ある商材を並べるショップを展開していただいております。

直近までは支店長応接として使っていた旧頭取室は、観光客の方に一般開放しようということでレストランの予約時間帯以外は無料見学いただけるスポットにしました。
銀行員の視点では思いつきにくい発想でしたが、非日常感がある特別な空間として、七五三や結婚前の両家の顔合わせなど、想定外に多くの方にご使用いただいております。
また、金庫室は耐震補強の調査の中で漆喰の壁の中に基礎のレンガが埋まっていることが分かりました。それを剥き出しに見せた方がギャラリーとして素敵なんじゃないかということで天井を抜き、鉄骨を補強で入れながら見学スポットに仕立てたのです。
金庫室には、当時担保品としてお預かりしていた高級な絹や織物を保管していた蔵の鬼瓦も大切に展示しております。最近、同じものが一つ見つかり、寄贈いただいて埼玉りそな本店に増やして飾っているところです。
